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《イケメン戦国》初恋〜運命の赤い糸〜

第9章 〜記憶の欠片〜


そして、『雪姫を泣かせて
ばっかりだよな。俺が弱くて
頼りなからだよな。ごめん』
と悲しげに目を伏せた。

『そんなことありません』と
雪姫は否定した。

『いや、こんなボロボロにやられて
強ければ今川の奴らにいいように
されるなんてなかったはず!』と
布団を握り締め悔しさを滲ませた。

『俺は、人質として今川に
預けられてから、針のむしろの
ような生活だった。いつも屈辱に
耐えていた。そんな俺の唯一の
心の支えが桜奈と鷹山殿だった。
でも、結局あの日も誰も救えなかった。
鷹山殿も母君も。桜奈を救ったのも
俺じゃない。信長様だ。
桜奈を守ると誓っていたのに
何もできなかった。あんな思いを
二度としたくなくて、今まで必死に
やってきたのに、今こんなザマになってる
自分に無性に腹が立つ。』そう言って
顔を横に背け、また唇を噛み締める家康。

雪姫は、布団を握り締める家康の手に
手を乗せると

『家康様は、弱くなどありません』
真っ直ぐに強い意思を持った眼差で
家康を見つめてそう言った。

『桜奈を救って下さったのは
家康様です。あの日、あの文を父に
見せた後から、急に皆が慌ただしく
動きはじめました。今思えば
父は、家康様からの文に何かを
察し、そして、覚悟を決めたの
だと思います。戦支度があっと
いう間に進んでいった気がします。
それから、父は私を信長様に託し
城から出しました。

きっと幼い私を想えば
母を私と城から出すことも
父は考えていたはずです。
でも、母は父の側に居ること
望み父も受け入れた。

だからこそ父は、私に
桜奈には竹千代様がいる。
竹千代様を悲しませるな。
ずっと側にいて竹千代様を
支えて、強くなって竹千代様と
ずっと笑い合って生きて行けと
言われたのだと思います。

もし、あの文を頂いていなければ
今川の急襲になす術なく、私は両親と共に
城に残り、生きてはいなかったでしょう。
あの文こそが私の命を救う時間を作って
くれたのです。 それは、家康様が私の命を
救ってくれたに等しいものでございます。

そして、先だっても雪姫は
家康様に命を、救われました。
私の命を二度も救って下さった方が
弱いはずなどございません!!』

桜奈の言葉に家康は、あの日の
自分を許されたような気がした。
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