第9章 〜記憶の欠片〜
『まぁ、それだけの口がきけるなら
ボロボロにされた時の話を
詳しく聞かせて貰おうか』とニヤリ
としながら辛辣な物言いをする光秀。
『ボロボロって、酷えな、もっと
別な言い方あるだろう光秀』と秀吉。
『秀吉さん、本当の事だから
構いません。』と眉間にシワを寄せ
家康は答えた。
『あの、賊の中に、今川の残党が
いました。顕如は、今川にとっては
裏切り者にも等しい俺も餌に使って
残党を集めてるんじゃないかと
思います。今回は、その一部が
私怨に走り、暴走したに過ぎない
だけかも知れません。』
『やはり、そうか。捕らえた
者の中に見た顔があったから
もしやと思ったが、それなら
詳しい話を吐いてもらわねばな』と
ゾクリとする笑みを浮かべる光秀。
光秀にどんな尋問を受けるのかと
一瞬だが、賊に同情しそうになる
秀吉と政宗だった。
『それだけ聞ければ十分だ。
雪姫に甘え過ぎて、腑抜けに
ならぬよう養生しろよ』と光秀は
部屋から出て行った。
『さぁ、俺らも長居しすぎると
家康につまみ出されかねないから
仕事に戻るぞー』と秀吉。
(そうして、くれると助かる)
『また、今度、美味いもん
持ってくるわ、激甘なやつな』と政宗
(唐辛子、山程かけて食ってやる)
『家康、早く良くなってね!
早く雪姫さん返してよ』と栞
(いや、雪姫は俺のもんだし
絶対、栞には貸さない)
『家康様、いつでも雪姫様と
看病を変わりますので、ご遠慮なく』と三成
『三成に看病されるくらいなら
今日中に、治す!』
『ご回復が早まるなら、今日は
雪姫様と看病を交代した方が
よろしいですね』ニコニコの三成。
『はーっ、もういい、早く行って』
そんな様子を安堵の表情で
見守る雪姫。
皆が出て行った後、また
傷の手当てをする雪姫だったが
慎重に手当てをしていても
激痛に家康の顔が時折
微かに歪む。
『家康様、痛みますか?』
『大丈夫だから気にしないで、続けて』
雪姫は、慎重ながら手際よく
手当てをするがその顔は
家康よりも辛そうな表情になる。
『なんで、雪姫が痛そうな
顔するわけ?』
『だって、こんなに酷い傷ですから
見ているこちらが、痛々しくて』と
また、涙をためる。
『ったく、俺のお姫様は
いつからこんなに、泣き虫に
なったんだ?』と優しく微笑むと
涙を拭ってくれた。