第2章 〜突然の別れ〜
しかし、運命は二人の赤い糸を
引き千切るかのように、牙をむいた。
乱世の世にいて、想い人と過ごす
平穏で、他愛ない、ささやかな幸せは
一瞬で消えてしまうほど、儚い・・・
竹千代と桜奈のささやかな
幸せがそうであったように・・・
才覚の優れた、桜奈の父は
強い信念の持ち主でもあった。
力なきゆえ、強国である今川に屈するより
民を守る術がなかった桜奈の父。
ひとたび、戦が起これば苦しむのは
いつの時代も弱き民ばかり。
民を守りたい、その一念で
今川と他の強国との外交や和睦の
交渉を一手に担っていた。
その交渉の為、信長との謁見も
度重なっていた。
敵同士でありながら、目指した
先に見える世は、同じ景色をしていた。
想いが、自然と通じ合う。
それはお互いに感じていた。
立場上、決して表に出すことは
許さなれない信頼がそこにはあった。
桜奈の父の功績もあり、義元は
我が世の春を謳歌できていたのだった。
しかし、どんどん野心を
膨らませて行く 義元。
公家と肩を並べる身分の今川は
公家との親交も深く
その、関係を維持する上でも
贅沢は、当然の嗜みであった。
そして、隙あらば領土拡大を目論む
義元にとって、財はいくらあっても
足りないものだった。