第8章 〜想いよ、届け〜
そんな平穏な日々の傍で
雪姫を襲った顕如の動向を探っていた
家康達武将は、その賊のアジトを
つきとめた。
緊急の会議の為、家康と栞は
安土城に向かった。
雪姫は、まだ足が完治してない為
大事をとって留守番になった。
二人を見送ると
雪姫は、餌を持って
『わさび、ご飯ですよ』と呼んだ。
わさびは、草陰から勢いよく
飛び出してくると、雪姫に
頭を擦りながら擦り寄ってきた。
栞とは、じゃれ合い仲間だと思って
いるらしく、よく栞を追いかけて
遊んでた。雪姫は、餌をくれる人と
思っているのか、いつも大人しかった。
『はい、わさび、林檎美味しい?』
と頭を撫でながら
『貴方のご主人様、これから悪い人を
捕まえに行く事になるんだよ
わさびも心配でしょう?』
と、雪姫は、胸騒ぎのような
騒つきを抑えるかのように胸に
手を当て握り締めていた。
安土城での会議は
家康が、賊の捕獲に向かい
三成が、後方支援と言う事になった。
雪姫を助けた時、賊の浪人を
切ってしまったため、捕獲して
取り調べできなかった事への
責任から、自ら志願した。
三成は、信長からの命で
後方支援に回るようにと
指名された。
『三成と組むくらいなら
一人で構いませんけど』
という家康に
『家康様のお役に立てるなら
光栄です』と三成は
ニコニコする。
『これは、命令だ。三成の
後方支援が嫌なら貴様を
この一件からは外す』と
言われ、『はっー、分かりました』
と渋々承知した。
家康としては、雪姫を傷つけた
奴らがどうしても許せなくて
自分の手で捕まえなければ
また、危ない目に、遭うかもと
気が気ではなかったのだ。
一気に片をつけようとしてた。
久々に栞に会った信長は
共に過ごす時間を伸ばしたかった
ことは、おくびにも出さず
作戦の具体的な詰めの話を
する名目で、皆で夕餉を
取る事にした。
栞も何だか久しぶり信長様に
会えた事が嬉しかったのか
信長様の隣でお酌をしながら
自分もかなり飲まされた。
家康と御殿に帰る時は
結構、フラフラしていた。
『あんた飲み過ぎ』
『あー、家康、また、あんたって
いってるしーヒック、雪姫さんに
言いつけてやるもんねーヒック』と
酔うと絡む性格らしかった。
『雪姫が、心配してるから
急いで』と栞の手を引いて
家路を急いだ。