第8章 〜想いよ、届け〜
栞の特訓は続いていた。
しかし、栞の根性は姫特訓の時に証明済。
日々、上達して行き、家康も驚く程だった。
その日の特訓が終わり差し掛かった頃
思い出したように家康は、ふと気になって
いた事を、栞にきいた。
『そう言えば、他のみんなは
呼び捨てなのに、どうして俺は『様』
付けなわけ』と聞いてきた。
『あぁ、それは、皆さんが様付け
しなくていいってくれたからです』
『ふーん。そうなんだ、じゃ俺も呼び捨て
でいいよ。俺だけ様付けは、気持ち悪い』
『気持ち悪いって・・・、じゃ家康様
じゃなくて、家康も『あんた』じゃなく
名前で呼んで下さい。私も雪姫さんも!!』
『それと、これ関係ある?』とやや不機嫌。
『関係あります!あんたってよばれると
雪姫さんと私のどっちに話かけてるか
わからなくなるし!!』と言い
『はい、じゃ練習』と無理に
言わせた栞のことは、栞が傷つくほど
あっさり『栞』と呼んだが
雪姫に向かうと『///ゆ、ゆ、雪姫///』
と声がいきなり小さくなり聞こえない。
見兼ねて雪姫が『無理なさらずとも』
と言ったが、栞はダメだとばかりに
『いいえ、雪姫さん、これは
大事なことですよ。だってぇ
ちゃんと名前呼をもらえないのは〜
自分には、一切興味がないのかな〜
名前呼ぶのも面倒なくらい
鬱陶しいと思われてんのかな〜
もしかして、私は、この方に
嫌われてるのかも〜って思って
しまいそうに、なりません?』と
いつもの仕返しとばかりに
小悪魔のように、俯く家康を覗きこむ。
(くっ、こんな奴にもバレてんのかよ!)
と、半ばやけくそになり
『分かりました、呼べばいいんでしょ
呼べば!』
と雪姫の方をみて『雪姫』と呼んだ。
『は、はい』(///ビクッ///)
鼓動が高鳴る。
その後、栞の特訓も続けながら
雪姫に薬の調合も教えた。
『雪姫、じゃ、これとこれ
合わせて、すり潰して』
『はい、分かりました』
栞のおかげで、家康は雪姫の
名を呼べるようになっていた。
こうやって、薬の調合を教えているが
その知識の吸収の速さに、家康は
驚く。栞と同じく努力を惜しまない
性格なんだと、雪姫の新しい一面を
みた気がした。
雪姫の捻挫はだいぶ良くなり
普通に歩くくらいなら問題
なかったが、まだ走ったりすると
痛みが出る為もう少しかかりそうだった。