第6章 勝負
カタリ…とゆっくり中に入るとそこには床に布団を敷き眠る雅がいた。
「チ…どいつもこいつも…」
そう髪をくしゃりと掻き上げると法衣をバサリと脱ぎ椅子にかけた。そのままゆっくりと掛け布団を剥ぐとそっと雅の体の下に腕を入れ抱き上げる。
「…フ……んな、無防備に寝てんじゃねぇよ。馬鹿が」
そう言いながらもベッドに寝かせ、そっと掛け布団も掛けた。
「全く、世話のかかる…」
そういうと上から見下ろし少し見詰めていた。
「…そう簡単に渡しやしねぇよ……」
不意に三蔵の唇は動き、ポツリと呟いた。そのまま雅が寝ていた布団に入り珍しく三蔵は床で眠りに就いた。
翌朝…
「ン…」
先に目を覚ましたのは雅の方だった。ゆっくり体を起こすも何か昨夜と様子が違うことに気付くにはそう時間はかからなかった。
「…何か…すごく柔らか……・・・ッッ!?!?」
そう。自身は床で寝ていたはず。間違いなくそうの筈なのに…少しパニックになりながらもゆっくり恐る恐ると床を見るとそこには三蔵が眠っていた。
「さ…三蔵…!?」
「…うるせぇよ」
少しの間の後にただひと言、返事が返ってきた。
「三蔵…!あの…私…昨日確か下で…」
「帰った時に邪魔だったから上に上げただけだ。」
「でもそうしたら三蔵…」
「朝からうるせぇんだよ。」
そう言うと、『クッ…』っと声を漏らしながらも体を起こした三蔵。首をぐるりと、ひと回してひとつため息を吐くとちらりとベッドの上の雅に目をやった。
「…なんだ」
「三蔵、……体痛くない?」
「……横になれただけ未だ良い。」
「ごめんね?疲れてるのに…」
「…どうってことねぇ。それよりお前は簡単に謝りすぎなんだよ。そんなにすぐ謝んじゃねぇ。」
「だって…」
「あぁ、もぅ。うぜぇ…悪いことしてねぇ時に謝る必要なんざねだろうが。」
「…三蔵の事、床で寝かせた。」
「それが理由なら尚更謝る必要ねぇな。さっきも言ったが俺が通るのに邪魔だったから上にあげた。それだけだ。」
そう言うと立ち上がり顔を洗いに洗面台に向かった三蔵の背中を見つめ、雅はポツリと『ありがとう…』と言い直していた。