第4章 出発
「雅?話しちゃってもいいんじゃないですか?」
「なになにぃ?八戒は知ってるの?」
「いえ?僕も知りませんよ?ただ、これから旅を一緒にするなら話して貰ってもいい様な気はしますけど?」
「まぁ、どっちにしろ俺と八戒は妖怪だし?」
「悪人ではないですけどね?それに僕は妖怪と人間のハーフですよ?」
「ちなみに俺はねぇ……あれ、なぁ三蔵、俺は妖怪?」
「…異端児だ」
「だって!」
にかっと満面の笑みで応える3人。その中で自分は人間なのかどうなのかさえ怪しい所だ。
「で?雅は何で悪魔の子って言われてたんだ?」
「あの…これ…」
そう言うと長い髪をスッと掻き上げた。そのうなじには蝶の様な黒い痣があった。
「うわぁ…キレイ…」
「あぁ、確かに…」
「きれい…?」
「うん!触ったりしてもいい?」
「う…うん」
その返事を聞いた悟空はそっと指で触れてみる。
「痛くない?」
「痛くはないの。ただ、黒い蝶って不吉なんだって。それに加えて私、昨日も見たでしょ?治したいって思うとピンク色に光って傷口を治しちゃう…おかしいでしょ?こんなのおかしいし…私の両親は普通よりも少しだけ特別な力があるだけだっていつも言ってくれてた。だけどその両親も死んじゃった。殺されたの。……」
「くだらねぇな」
「……くだらない?」
「あぁ、超くだらねぇ。」
そう言い放ったのは八戒の運転の横に座っていた三蔵だった。
「何てこと言うんだよ!三蔵!」
「そうだぜ?雅が一生懸命話してくれてんのによ!」
「くだらねぇからくだらねぇって言ったまでだ。何が悪い」
言い争いになりながらもすこしだけジープを停めた八戒。三蔵の言い分を聞こうと2人を宥めた。
「傷口を治す、その力があって何がおかしい。黒の蝶だ?それがどうした。黒蝶の痣が悪魔の印だなんて聞いた事もねぇ。それに昨日お前はそのおかしいと自分で言い放った力で俺の左腕を頼んでもねぇのに治した。自信持ってる証拠じゃねぇか。それを何周りの奴らの言葉に踊らされておかしいだ、悪魔だって言ってんだ。馬鹿か。お前がどうしたいか、どう生きたいか、重要なのはそれだけだろうが…それに…人生なんざ元々、死ぬまでの悪あがきだろ」
そういつもよりも少し長い三蔵の言い分を聞いて雅はうっすらと涙を溜めた。