第3章 知られた能力
翌朝の早朝に、雅は大量の食事を用意していた。その内の2/3は鞄に詰めていく。
「……えらく早いな」
そう不意に後ろから声をかけてきたのは低血圧で朝が苦手だと話していた三蔵だった。
「あ、おはよう…ございます」
「どうするんだ、そんなにたくさん」
「持っていきます」
「持って行く…だと?」
「御存知の通り、ここでは私、悪魔の子って呼ばれてるんです。其れもあの力の為…もし迷惑じゃなかったら一緒に行きたいです」
「何ふざけた事言ってやがる」
「昨日!……昨日三蔵聞いたよね…?『なんでお前は俺を避けなかった』って。このヒールの力のせいなのか、それとも本当に私が悪魔の子で怖い感覚がないのか…だけど、私は三蔵の事悪いとか、嫌だなんて感じ受けなかった!」
「…それが俺たちに着いて来る理由になるとでも思ってるのか?」
「……私の我儘かも知れない…だけど…もっと一緒に居たいって…たった2日しか一緒に居なかったけど……そう思ったの」
「それはお前だけだろうが。俺は『僕も、そう思いますけど?』……八戒」
「俺もー!もっと雅の菓子食いたい!!」
「てかさぁ、恩を仇で返すとか三蔵様のが悪魔の子なんじゃないの?」
他の3人の言葉もあった。それでももともとタレ目も三蔵の目がスッと細くなる。そんな三蔵に対して八戒はさらに言葉を続けた。
「このままここに雅さんを置いていくのも少し心配な気もします。三蔵?雅さんが居れば白竜の回復も早くなる。僕だって回復に使う妖力を攻撃に使える。良い事づくめじゃぁないですか?」
「……足手まといになるぞ?」
「それは三蔵次第ですよ。何と言っても相手の目的はただ1つ。三蔵の持ってる魔天経文なんですから。」
「……チ…」
「三蔵?」
「好きにしろ。…その代り邪魔になったらいつでも関係なく捨てるからな」
そう言いながらどさりと食卓に着く。
「……おい!」
「はい?」
「飯だ。」
「…クスクス」
笑いながらも雅はこの町で最後の朝食の支度をする。悟空や悟浄は一気にテンションが上がったように叫んでいた。
「うるせぇ!!!」
スパーンといつも通りにハリセンが飛んでくるのも解って居るだろうに…そんな光景を見ながらも雅は支度を始めた。