第3章 お支払いという名の航海
『リオ』
ふと聞こえた声。この声は…
『師匠』
ウェーブがかかった短い銀髪。
『どうした?寂しいなら来いよ』
人懐っこそうな顔でニッと笑う師匠。
遠慮せず抱き着くと師匠の温もりを感じた。
『寂しかったのか、よしよし』
優しく頭を撫でてもらったらすぐに眠りに誘われる。
『いい夢を』
師匠の声を最後に声は聞こえなくなった。
「ん…」
次に目を覚ますと身体に柔らかい感触を感じた。
(あれ…私長椅子に横に…)
寝起きでぼやける視界をこらし、目の前に見えたのは派手なタトゥーが刻まれた厚い胸板。
「……」
ギギギと音が鳴るかのように首を上に向けるとまだ眠りについているローの姿があった。
「うわぁぁああ!!??」
思わずドンッと胸板を押し、慌てて起き上がると自分の身体を触る。
(ふ、服は着てる…なんでこいつと一緒に…)
「……おい」
声がした方を見ると不機嫌そうにリオを睨む半裸のロー。
「何しやがる…」
「なんで半裸なんだよトラファルガー!」
「あ?俺はいつもこれで寝てる」
てめぇとは何にもねぇよと言うローの言葉にホッとしたリオ。
しかし、すぐに今起きている状況について確認する。
「私なんでここに寝てるの?」
「俺が連れてきた」
「……」
もはや反論する気力もないのかため息をつくとベッドから立ち上がる。
「どこに行く」
「朝ごはんの準備」
乱れた髪を整えながらドアの方へ向かうリオ。
ドアに手をかけた瞬間、ローに後ろから抱きしめられた。
「は!?な、なにすんの!」
「今日からお前の寝床はここだ。それ以外で寝てたらまた連れてくるからな」
「な…!!」
顔を赤くし必死にローの腕から逃げようとするリオ
ローはその様子に笑うとリオを離し解放する。
「ば、バカファルガー!今日のご飯パンにしてやるからな!!」
リオは赤い顔のままドアを開けるとバンッ!と大きな音を立てて閉め、食堂に向かう。
その様子を見たロー。
「……面白ぇ」
その言葉の意味するものを、この時のリオは知らなかった。