第3章 お支払いという名の航海
「……とまぁこんな感じの能力」
「なるほどな。じゃあお前は戦えるんだな」
「まぁそれなりに…。賞金首になりたくないから基本は逃げる。」
「へぇ。能力についてはわかった」
「じゃあ私は夕ご飯の仕込みしてきます」
言い切ったと思ったリオはローの気持ちが変わる前にとリオはそそくさ船長室から出て行った。
「素性は売らねぇか…」
船長室に響いたローの言葉はリオには届いていない。
その日の夜中。
船長室で医学書を読みこんでいたローは机に置いてあったマグカップが空になっている事に気づく。
夕食時にリオが食事と共に持ってきたコーヒーは知らないうちに飲み干していたようだ。
(仕方ねぇ…)
マグカップを持ち、ローは船長室を出て食堂に向かう。
食堂に入り、キッチンに行こうとすると普段食事を摂る際に座る長椅子に誰かが横になっている事に気づく。
誰だと思い近づくとそこにいたのはリオ。
薄い掛布に包まるように眠っていた。
(こいつ…こんなとこで寝ていたのか)
リオが最初に船に乗った時に寝る場所について話そうとしたが
『あ、寝る場所は気にしないで。いいとこ見つけたから』
と話をぶった切った経緯があった。
(いいとこじゃねぇだろ…)
柔らかい部分が無い、明らかに寝心地悪そうな椅子。
ローはため息をついてマグカップを流し台に置きリオに再度近づくと横抱きの形で抱き上げる。
抱き上げられているのにリオは目を覚まさない。
そのまま船長室に向かい、器用にドアを開け自身のベッドに向かう。
移動中も目を覚まさないリオをベッドに横にし、掛布を取り上げ自身の柔らかい掛布を掛ける。
しばらくリオを見ていたローだが、着ていたパーカーを脱いで上半身裸になるとリオの隣に横になり、そのままリオを抱き寄せる。
「ん…」
抱き寄せられたことでリオは身じろぐが目を覚ます事はない。
その様子にニヤリと笑い、ローはそのまま眠りについた。