第19章 相見える2人のオルニス
「ぐあぁあ!くっ…!!」
リオは左手で腰のホルダーから海水が入っているボトルを取り出すとスパローに向かってボトルをぶつける。
この海水で力が抜けるはずと考えたが、その前にスパローが離れ、ぶつけようとしたボトルは空を切り地面へと落ちる。
落ちた衝撃でボトルは割れ、中に入っていた海水が地面に染み渡る。
「お前の右腕はもう使えねぇ…あいつと違ってお前は弱ぇ」
リオは噛みつかれた右腕を見る。
牙が通った場所から幾多の血が流れ、骨を砕かれた事もありだらりと力を入れる事も出来ない。
そんな右腕の状態に舌打ちしリオはスパローを見つめる。
「……私は師匠に劣る。あの人の強さは7年間、隣でずっと見てきた…すごい強い人だった」
幼い自分を救ってくれた優しい師匠。
シルバークロウの名に相応しく博識でとても強かった人。
大好きで堪らなかった人。
「でも、あの人はこんな弱い私を弟子にしてくれた…選んでくれた…!!師匠が死んでから9年、師匠の偉大さばかり痛感した!あの人は死ぬべき人じゃなかった!!」
「そんな弱いお前があいつを死なせたんだろ?あいつが死ぬわけねぇ」
「貴方は何も知らないくせに…!!あの人の死の真実を知らないのに知った風な口を利かないで!!」
リオはそう言うと左手を握り、痛む右腕に無理矢理力を入れて上にかざす。
「この技は使いたくなかった…身体への負担が大きすぎるから…」
右腕から流れていた血液が傷ついた右腕全体と左手の拳を覆っていく。
「私の能力はあやゆる水分を操作できる…つまり、今私の腕に流れているこいつも私にとっては矛にも盾にもなる…」