第16章 恋慕と葛藤
『師匠、人を愛するってどんな感じですか?』
昔、家族から殺されかけて師匠と旅をしていた時に私が聞いた事。
母から愛された事はあっても記憶があまり残っていない。
自分自身は人を愛した記憶が無くて一番相談しやすい師匠に質問したのを覚えている。
『うーん…言葉にするのが難しいな…とりあえず幸せな気持ちになる』
『幸せってなんですか?』
『また言葉にしにくいんだよなぁ…こう心がポカポカするというか…なんかわかんないけど幸せってこうなんだって感じる』
『それ答えになってないです』
『とにかく、大人になって誰かに恋したら自然とわかるよ』
そう言って師匠が頭を撫でてくれた。
師匠が死んでから気づいたけど、師匠も私を愛してくれていたと思う。
家族がいたら師匠みたいなのを言うのかって大人になってわかった。
いつかは誰かに恋する日もあるのかと思ったけど、情報屋としての責任もあったから女性としての幸せは無縁のものだと思っていた。
(これが幸せって感じなんですね師匠)
リオが心の中でそう言うとローの身体が離れ、2人は見つめ合う。
そしてローがゆっくりとリオの顔へ近づいていく。