第16章 恋慕と葛藤
「あら、シルバー寝ちゃったの?」
ローは上から聞こえたナミの声に顔を上げる。
「あぁ。起きるまでいてもいいか?」
「大丈夫よ。起こしちゃ可哀そうだしね」
ナミは膝枕で眠っているリオを見て微笑む。
(甘えるって課題は少し進歩したのね…)
「ナミ屋、まだ何かあるか?」
「ないわよ、ごゆっくり」
ナミはそう言うと船内へ戻っていった。
ローは懐にしまっていた小さな本を取り出すと読み始める。
右手は本。左手はリオの頭を撫でたまま。
時々身じろぐリオを見てローは柔らかい表情で掛布を直す。
2人の周りには穏やかな時間が流れていた。
「ん…」
リオが目を覚ますと眠った時同様、ローの膝の上に頭を乗せていた。
「起きたか?」
寝ぼけ眼で目を擦っていると上からローの声が聞こえ、思わずふにゃっと笑う。
「おはよ…ロー…」
「あぁ。そろそろ船に戻るぞ」
「ん…」
リオは身体を起こし、ローも本を懐にしまうと立ち上がる。
「待ってろ」
それだけ言うとローは歩いて行き、船内へと入っていった。