第11章 『カラダが勝手に動くんだよ』…それ。(O)
「…あれヤバいわね。警察沙汰になりかねないわよ」
「ケ、ケーサツ!?」
「オーゴトにならなきゃいいけど…。ほら、あのテの男は怖いから。最終的には可愛さあまって彼女の方に刃を向けかねないのよねェ…」
この道に詳しいママの言うことには重みがあって。俺は呆然としたままそこに立ってた。そしたら、モメてた一人が離れて、こっちの方にきて…。なんかあからさまにヤバイんだよ。かなりイっちゃってて。怖ぇって避けたら、その男、俺のすぐ横の店先にあった空ボトル掴んでカシャーンって割ったの!
それだけでもう超ビックリしたけど、その男…
うおおおおっ!って変な声出して、彼女の方に戻ってったの!俺の知らない彼女の名前と、『殺してやる!!』とか叫びながら…ッ!!
「あっ。大チャンっ!?」
気付いたら、体が動いてた。
走りながら、俺、何か叫んでた。たぶん…『避けて!』とか『逃げて!』みたいなこと。自分でも憶えてない。とにかくなんかこう、焦ってて…めちゃくちゃ焦ってた。
割れたビン振り回してる男の背中に思いっきりラジコンの箱投げつけて、ヤツが転んでるスキに猛ダッシュで追い抜いて、彼女の手を掴んで
走った。
とにかく、走った。
怖いのと、ほとんど無意識で。
気付いたら人気のないトンネルみたいなトコにいて
「ハァ、ハァッ…」
こ、怖かった…。
マツジュンとニノが言ってたのって、これ?『危ない』って…。
ホントに危なかったよ!?だって、下手したら怪我とかじゃすまないでしょ!アイツ、『殺してやる!』とか言ってたしっ!?
まだ、恐怖が残ってる。あと、苦しい。とにかく息が、苦しい。
「…だい、じょうぶ…?」
俺は必死で息を整えながら、同じくゼーハー苦しそうな遥ちゃんを見上げた。