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後輩《テニスの王子様 手塚国光》

第4章 我慢強い後輩


手塚国光と言う男は、自分を律する事に長けていた。
自分自身を甘やかす事や規律を乱す事を是とせず、これまでの人生を折り目正しく生きてきた。

そしてそれは、今後の人生でもきっとそう変わらないだろうと手塚自身どこか諦めたような気持ちで自覚していた。



物憂げな表情を浮かべる後輩は、今日も顔の造形が大変お美しい。
涼やかな目元にスッと通った鼻筋、きゅっと引き締められた薄い唇。
一つ一つのパーツが完璧なバランスで配置されている様は彼の生きざまそのもののようで、面白いものだなぁと思ってしまう。

今日は、国光が高等部の図書室に借りたい洋書があると言うので、ランチも兼ねて昼休みに高等部へお招きしたのである。

高等部の図書室、洋書の書架は特にひと気がなく、しんとしていた。私は国光の本選びを邪魔しないようにと、背の高い本棚の間を散策することにした。日頃あまり縁のない図書室は私にとって物珍しく、外からの光できらきらと埃が反射する様子ですら趣深く感じてしまうのだった。


「ふふ、ダメだよ、誰か来ちゃう…」
「こんなトコ誰も来ねーよ」

そんなひそひそ話が突然耳に飛び込んできたのは、1番奥の書架を挟んで一つ手前の通路をふらっと通りかかった時だった。

そして続く女性のくぐもった声や衣擦れの音、荒い呼吸、そこで何が行われているかは、そう言った事に比較的鈍い私でも容易に想像が出来た。

「ぁ、ん…っ」

棚の向こうから聴こえてくる喘ぎ声に頭が真っ白になる。
ととととにかく、何も聞かなかったことにして、足音を立てずに、迅速に、早急に、1秒でも早く、この場から引き返そう。それが良い!時間にして数秒、脳内会議を終えて振り返ろうとした瞬間、低くて脳を蕩けさせる大好きな声が降ってきたのだ。

「、待たせてすまない…」


Oh!ナ ン テ コ ッ タ イ 。

タイミングの悪いことに、本を選び終えた国光がそこに立っていた。きらきら純情中学生の国光にあの爛れた現場を見せるわけにはいかないし、何とかしてここから退避させなければ…。

幸い国光はまだ奥の事態に気付いて居ない様子だし、さっさとカウンターの方へ促せば良いだけだ。

「あ、あー!本見つかったの?ならもう行こ?私お腹空いちゃったなー!!」

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