第3章 嫉妬深い後輩
「そうね、君以上に生意気そうなのはわかるよ」
挑発的な目。
際どいコースを攻められれば攻められるほど、テンションを上げていくタイプ。
「…練習をご覧になるなら、熱中症には注意してください」
「はいは〜い」
すっかり越前君のプレイに魅了されていた私は、その時の手塚の険しい表情に気付いてすらいなかった。
***
「今日の練習はここまで!」
大石君の声を皮切りに、わっと片付けが始まる。
暫く待っていると、着替え終えたレギュラー陣が部室から出てくる。
「はー!今日の練習もキツかったにゃー」
「お疲れさま、英二。頑張ってたね」
「先輩!ねーねーこの後何か食べに行こーよ!!ね?ね?俺腹ぺこで死にそうなんだよ〜。桃ー!おチビー!一緒に行くだろー?」
英二お得意の上目遣いでおねだり。
お腹も空いているし、ルーキー君にも興味があるし、頷きかけた所で待ったが入った。
「先輩には先約がある。菊丸、他を当たれ」
有無を言わさぬ物言いで英二を制すると、手塚は私の手を引いて皆の輪からどんどん離れていく。
手塚、何か怒ってる…。
それぞれ帰路につく皆から離れてどこへ行くのかと思いきや、来た道を戻ってたどり着いたのは部室の裏手。先程までの賑わいが嘘のように今は静まり返っている。
「国光、あのさっきはごめんなさい、大事な練習の邪魔しちゃって…」
英二とは二言三言交した程度だけど、大会に向けての大事な練習時間を浮ついた気持ちで邪魔をしてしまった。
「……何もわかっていないようだな。それともわざと俺を怒らせてるのか?」
顔を上げると、手塚の不機嫌ゲージはMAX。
丸く収めるつもりがジャンプで地雷踏み抜いた感触あるわ…。
「け、けけ、決してそんなつもりでは…」
努めて明るい声で返すものの、ただでさえ鋭い眼光が鋭さを更に増すのに耐えきれず視線を泳がせる。
とんっと部室の壁が背中に触れて、無意識に自分が後ずさりしていた事に気付いた。
「もう少し、自覚を持てと言う話だ…」
手塚の綺麗な指が頬に触れたかと思うと、そのまま噛み付くようにキスをされた。