第3章 Tの決意
軽いリップ音を立てて離れたかと思うと、またすぐに柔らかく触れる。それを数回繰り返されて、トミーはたまらず小さく息を吐いた。その瞬間を逃さず、ナマエの熱く柔らかい舌がトミーの中に入ってくる。入り口を少し探って出ていき、下唇を軽く舐め、また中に入ってくる。今度はすぐに出ていかず、歯列をなぞりトミーの舌を誘い出す。誘われるがまま隙間から舌を出すと、ちろちろと様子を窺うように擽ってきた。その感覚に背筋が粟立つのが分かった。どこまでも優しく口内をまさぐるナマエの舌は、先ほどと同じくリップ音と共にトミーの中から出ていった。トミーが先ほどしたものとは比べ物にならないほど、優しくいやらしい口づけだった。
「寝込み襲うなら、このくらい優しくやれよトミー。彼女には気をつけるんだぞ」
息が上がったトミーと呆然としているカンタを尻目に、ソファから起き上がったナマエは寝起きの声音でそう言うとふらふらとリビングから出ていった。
残された二人は一体何が起きたのか整理がつかないでいる。トミーに至ってはパニック状態だ。
「え、俺脈ありってこと?」
「・・・いや、寝ぼけてるって線も捨てがたい」
「お前悔しいだけだろ負け惜しみすんな」
しかしあのキスで二人に勇気が出たのも事実である。
ナマエはトミーと理解してキスをしていたのだ。男同士に抵抗はないと捉えられる。
「俺も攻めてみるわ、ガンガン」
「・・・どっちか一人だけ選ばれたとしても、恨みっこなしな」
「もちろん」
お互いに嫉妬はすれど、ナマエとは違う意味で大事に思っている相手だ。どちらか一人だけナマエに選ばれたとしても、それは悔しいことではなく喜ばしいことである。
でも一番は、トミーもカンタも、二人同じく特別に思ってもらいたい。
言葉はなくともお互いの健闘を祈って拳を合わせる二人だった。