第3章 Tの決意
「ていうか早くナマエさん起こしてやれよ。風邪ひくって」
「まだ。もうちょっと見てたい」
「お前なぁ」
駄々を捏ねるカンタの背中に軽く蹴りを入れる。それでもナマエの傍を離れようとしないため、諦めてキッチンへ向かう。酒のせいで喉が渇く。レッドブルが飲みたい。
一応カンタの分のレッドブルも冷蔵庫から出しリビングへ戻る。カンタは変わらずナマエを見つめていた。
空いているソファに座りレッドブルを開ける。その音に、俺も飲みたいと目線を外さずカンタは言う。その態度にイラっとしながら、カンタ用に持ってきたレッドブルを押し付ける。少し力を入れてしまったのは、カンタの態度にイラついたのと、いつまでもナマエの近くにいることにイラついたからである。
「トミーはさ、ナマエさんとどうなりたいとか、考えてるの?」
レッドブルを一口飲み、カンタはそんな質問をしてくる。そこでやっと、カンタの視線がトミーに向いた。
「お前はどう思ってんの?ナマエさんどうしたいの?」
「俺は・・・」
カンタは少しの間目を閉じた。真剣に考えているようだった。レッドブルを口に含み、決意したように嚥下し目を開けた。
「俺は、今みたいにナマエさんが俺らの手伝いしながら一緒にいてくれるなら、今のままで、いいかなぁ」
カンタのその答えに、トミーは今日一番に腹が立った。こいつは、あの三年間を忘れたのか。
「俺はそんなの無理。今のままなんて、絶対続けられるわけない。俺らが今のままだったら、いつかは絶対ナマエさん、この家出てくよ。俺らと違って、普通の社会人なんだから。この家出ていかれたら、前みたいなことが起こらないって言いきれない。もう俺は、ナマエさんと音信不通なんて耐えられないよ」