第10章 Austrian Briar Rose
「どうしよう…」
彼が島に帰ってきて早1年。
私は大きな問題に直面していた。
「ねぇロシー、誕生日っていつなの?」
何気なく聞いた彼の誕生日。
「ん?あぁ、7/15だ」
「え…」
帰ってきた答えに私は驚愕した。
誕生日は7/15。
今日は7/8。まさかの1週間後だ。
今まで聞かなかった私にも非はあるが…
よりにもよって1週間後。
誕生日にごちそうは用意できても…
「プレゼント…」
1週間後という短すぎる時間に頭を悩ませていた。
1カ月前であれば、誰かにお願いしてお店がたくさんある島に連れて行ってもらうのだが1週間後では間に合わない。
得意な編み物も考えたが、今は夏。季節に合わない。
うーんと考えたが、彼がほしいものが分からない。
彼には素敵なプレゼントをたくさんもらっている。
首で光っているだろうネックレス
左腕にあるブレスレット
そして結婚した証の指輪。
だから私もなにかプレゼントしたい。
「……とりあえずお店に行こう」
悩んでいてもしょうがない。
私はショルダーバッグを肩にかけて、杖を持つ。
外に出ようとした時
「どこか出かけるのか?」
私が出かける準備をした事に彼が気づいて声を掛けてくれる。
「うん、すぐに帰って来るから待ってて」
私は彼にそう言い、家を出た。