第2章 Carolina jasmine
海軍を退役して2カ月。
俺は彼女と幸せに暮らしていた。
だが。
一つだけ納得出来ない事がある。
「ロシナンテさん、今日はこのお花を植えてみましょう」
今日も彼女は俺の名前を呼ぶ。
彼女に名前を呼ばれると心が躍る気分になる。
だが…
「……なぁリオ」
「はい?」
「そろそろ敬語を外してもいいんじゃないか…?」
そう。
彼女と恋人になり、将来まで誓い合った。
これから生涯、彼女と共に生きていく。
なのに彼女は俺と敬語で話す。
島の奴らとはもう少し砕けた口調で話すのに…。
「あ…えっと…癖みたいなもので…」
少しバツが悪そうに彼女は指先で頬を掻く。
まぁ、俺と出会った時もそれ以降もずっと彼女は俺には敬語だ。
数年の癖は中々取れないと聞く。
それでも…
「敬語は嫌だ、あとロシナンテさんじゃなくてロシーって呼んでほしい」
子供の様なわがまま。
我ながら何をやっていると思ってしまう。
それでも求めてしまう。
ロシーは昔、兄が呼んでいた俺の愛称。
前までは呼ばれるのが嫌だったが…彼女にはそう呼んでほしい。
あの幼き兄の声ではなく、愛しの彼女の声で呼んでほしい。