第10章 実家
「私の両親は、そんな立派な呼び方をして頂かなくても大丈夫ですよ!ほんっと、フツーの一般人なんで!!!」
「そんな訳には、いかない」
きっぱりと言い切る信玄様に、次の言葉が出ない。私の事を大切に思ってくれてるからなんだけど……
「と、とにかく……えっと、、、あ!うちの家族は皆、甘い物が好きなんですよ!」
「甘味かーそうかー気が合いそうだなー」
そう言うと、さっきまでの険しい顔が一転、ニコニコと話しだす信玄様。
「この近くに有名なケーキ屋さんがあるから、買ってから行きましょう!」
「あぁ、そうだな、じゃあ今から……」
「?実家にはいつ、行くんですか?」
「明日にでも」
「じゃあ明日で……」
「いや、今から行ってどんな物かを確認する。万が一、失礼があってはいけないからな」
「ほんと、そんなに気を使って頂かなくても……」
「そんな訳には、いかない」
また言ってる……
って、もしかして……まさか……
「信玄様、緊張してますか?」
私のその言葉に一瞬、ドキッとした顔をした信玄様。
そして
「戦に行くよりも、緊張している」
「えええっ!?」
本当にっ!?
「あまりそう言うのは感じない方だと思っていたんだがなーまぁ、今まで経験したことのない状況下だから……」
頭を掻きながら、照れたように言う信玄様。だけど言葉を続けて
「でも、きょうこのご両親にお会い出来る喜びの方が大きいんだがな」
ニコッと笑ってくれる。そして
「ただ、俺がきょうこをこの時代から連れて行く事に対して……その、なんだ……心苦しさは、やっぱり……」
その言葉に思わず