第1章 現代
「きょうこさん、きょうこさんっ!」
はっ!として、顔を上げた……
ここは……
「現代…………?」
「あぁ、たぶん間違いないだろう……少し待っていてくれ」
そう言い残すと、佐助君は忍者装束のまま、街を歩いている人に声をかけた。
「すいません、今……何時ですか?」
うん。時間ぐらいしか聞けないよね……この格好だけでも変に思われ……
「その服はレンタルですか!?」
「あ、あぁ。これは自前で……」
「そうですか~本格的ですもんね~」
はい。本物ですよー
って、観光客なのかな……
「写真いいですかー?」
「あ、どうぞ……」
眼鏡をクイッと上げて、佐助君がポーズをとっている……
なんだかその呑気な風景を見ただけで、
あぁ……本当に現代に帰ってきたんだな、なんて実感した。
撮影の終わった佐助君が、頭を少し掻きながら……
「すまない、日にちまで確かめる事ができなかった」
「この格好だけでも、恥ずかしいけど……ちょっと聞きにくいよね……あ、そこの喫茶店に入ったら、新聞とかあるかもよ!」
「ナイスだ。きょうこさん。行こう!」
「お金……手持ちが少ないけど……」
「大丈夫、色々と用意してある。とりあえず食事代ぐらいなら俺も持ってる」
「良かった」
「腹が減っては戦は出来ぬ!だ、とりあえず腹ごしらえと行こう」
「うん!戦……みたいな物だよね!」
「もちろんだ、戦よりも大変になるかもしれない」
真面目な顔の佐助君。
「そうだね……」
残してきた信玄様の顔を思い出すと心苦しい。だけど……
「作戦会議も兼ねて、行こう」
「うん」
私達は戦国時代の服装のまま、近くの喫茶店に入った。