第2章 病院
「……ここ?」
「あぁ……そうみたいだ……」
佐助君が眼鏡をくいっと上げて言った。
信玄様を乗せて車が発進したあと、暫く走ってから大きな門をくぐり抜けて森……ううん、自然公園みたいな……綺麗に手入れの行き届いた木々や花々……のある……ずっと庭みたいな所を走っている……
本当に病院なんてあるのかな、なんて考えていたら
やっと目の前に、真っ白な建物のエントランスらしき物が見えた!
「あっ……!」
白衣を着た看護師さんらしき人達が立っている!
良かった!
エントランスに車が止まると、既に車イスが用意されていて……
「武田様ですね、お待ちしていました!」
二人の看護師さんが、信玄様の脇に手を入れると、抱えるようにして車イスに座らせた。
「ご家族の方もご一緒にどうぞ!先に検査を始めさせて頂きます」
検査から……?
「先に色々と伝えてあるんだ、時間もあまりないからね」
佐助君が色々と準備をしていてくれたんだな……
「そうなんだね、ありがとう……」
ホッとしてお礼を言ったけど……
建物の中に入って、思わず息を飲んだ。
あまりにも豪華すぎる建物に高価そうな調度品……
本当にここ病院なの!?
すると佐助君が看護師さんに
「すいません、検査、俺も一緒について行きます」
「検査ですので、ご本人様だけで大丈夫ですよ」
今いきなり現代に連れてこられて、わけわかんないよね……心配する佐助君の気持ちが痛い程に解る。だけど……
「大丈夫だ、佐助……」
信玄様が、薄く笑って言った。その声を聞いて看護師さんが
「ご家族様はこちらでお待ち下さい」
ニッコリと笑って、近くの待合室を教えてくれる。
「行ってくるよ、佐助……姫……」
「はい」「ご武運を」
いや、検査だけだから佐助君……
だけどその言葉で信玄様も、少し笑って……
信玄様を乗せた車イスは、検査室に向かって行った。