第12章 謀~ハカリゴト~
「きょうこがこの世の者ではないことは、知っているんだよな」
「あぁ。500年先から来たと言っていたな」
「お前はその言葉を、信じたのか?」
信玄様の問いに、信長様は直ぐには答えず 私の顔をじっと見て静かに言った。
「きょうこは、嘘が吐けん。
真か否か、それも解せん。それが俺の正直なところだ
だが……この包みを見て確信した。
信玄、貴様の顔色もな」
そう言って、コーラー味と書かれた小さな包みを開けて、口に放り込んだ。
「これは何と書いてあるんだ」
信長様が私に問い掛けた。
だけど直ぐに横から
「“こーらー”と書いてある」
信玄様が答えた。
「真か?」
少し苦々しい顔をした信長様が私にもう一度問い掛けた。
「はい」
「……佐助とやらも、同じ処からやって来たのだな」
「はい」
その返事を聞くと、またコーラー味の金平糖を口に放り込み、ガリガリと音をたてた。
「信長様、お味はいかがですか?」
「なかなか旨い。俺の好みを覚えていた事も褒めてやろう」
「ふふ、忘れるわけありませんよ」
にっこりと笑うと
「そうか……」
信長様も少しだけ、笑ってくれた。
だけど信玄様に顔を向け
「わざわざ貴様までもが丸腰でこの城に訪れるとは、余程のことだろう」
「あぁ。悔しいが、俺だけの力ではどうしようもないことばかりだ」
「こんな菓子折りだけで、俺に相談事か?」
「そんな簡単な話じゃないことは、其れを食っただけで解ったんだろう?」
「…………」
「…………」
また部屋の中は静まり返った。