第1章 現代
いつの間にかキツく瞑っていた目を開けた!
「信玄様っ!きょうこさんっ!!!」
「……佐助君」
戻ってこれた……ホッとしたのも束の間
「早くこちらにっ!」
佐助君が信玄様の背中にバスタオルをかけて、抱き抱えるようにして、急いでタクシーに乗り込んだ。
「早く!きょうこさんも!」
佐助君にタオルを渡された。
そう。現代はまだ酷い嵐の状態だったんだ……
タクシーに乗り込むと、先に伝えてあったのか、直ぐに車は発進した。
「無事にこっちに着いて良かった……お久しぶりです。信玄様……」
ホッとした佐助君が、抱き抱えたままの信玄様に声をかけた。
「あぁ……」
信玄様が小さく呟いた。
その声を聞いて佐助君が、私の顔を見た。
そして信玄様に
「すぐに治療が始まります」
と声をかけたけど、青白い顔をした信玄様は、黙って軽く首肯くだけだった……
佐助君も、信玄様の衰弱を酷く感じているようで
そして……何も出来ない私は、ただ黙って信玄様の手を握りしめているだけだった……