第11章 戦国時代
私達が戦国時代に帰る前日まで実家で過ごす事になり、少ない荷物も全部運びこんだ。
信玄様は何かをずっと彫っているようで……
それ以外は、母や私と話したり、父や兄が仕事から帰って来ると常に一緒に過ごしていた。
こんなに私の家族とベッタリで、疲れないのかな……なんて私が不安に思うぐらい、信玄様は常に気にかけてくれている。
まぁ、私も家族に全て話しスッキリしたからか、母に料理を教わったり
きっとまた、私達はここに戻って来れる!
そんな気分になるほど、私の心は晴れやかだった。
だけど……
現実は確実にやってくる。
「きょうこ、土産を買いに行きたいんだが、どこかいい店はあるかな?」
「謙信様や幸村にですか?」
「あぁ、もうそろそろ、帰る準備もしておかないとなー」
「そうですね……何かずっと彫ってましたけど、出来上がりました?」
「今夜、お父さんに渡そうと思っているんだ」
「そうなんですね!また喜びますね、家宝だ!なんて言って」
「喜んで頂けるといいんだがなー」
「きっと喜びますよ。兄も喜びそう」
「ははっ。本当にいい家族だ。俺はこの時代に来て心から良かったと思えるよ」
「はい!」
私達が二人で話していると、母から声がかかった。
「あら、出掛けるの?」
「うん。デパートに行こうかと思って。こっちのお土産を買いに行ってくるね」
「そう……」
少しだけ母が寂しそうに笑った。
「うん……」
私の寂しそうな返事を聞いた母が今度は、いつもの笑顔で
「じゃあー、帰りにケーキ買ってきて……あ!信玄君、沢山買わないでね!食べきれる分だけよ」
「選びきれなくて、つい」
頭を掻きながら返事をする信玄様を見て、私と母がコロコロと笑う。その姿を見て、信玄様も笑う。
それが嬉しくて、でも寂しくて……複雑な想いを抱えたまま、私は信玄様と出掛けた。