第12章 空いた心の穴
ましてや今やリヴァイ班にいるは自分の部下だった。女好きと言われていたリヴァイだったが、さすがに部下に手出しする趣味を彼は持ち合わせていなかった。だが、は彼にとって、やはり特別だった。日陰に育ったリヴァイにとってはは眩しすぎるほどの純粋さを持ち合わせていた。だが、は物乞いをしていて生き繋いできた子ども。眩しいと思っていた純粋性は間違いなくエルヴィンやリヴァイがに与えたものだった。
(今夜は女を買いに行くか)
幸い急ぎの書類はない。持て余す自分の衝動にケリをつけたい。そう思って私服に着替えた時である。
遠慮がちに叩かれる部屋のドアにリヴァイは気づいた。
「チッ、誰だ入れ。」
「失礼します。」
そこに現れたのはだった。リヴァイの心臓が跳ね上がる。
「どうしたんだ、こんな時間に。」
「エルヴィン団長から書類を預かってきました。今日中に仕上げるようにと」
「書類だと・・・?」
なんて事をしてくれたエルヴィンめ。人のささやかな隙間時間を潰すつもりか。
「仕方ない・・・置いていけ」
「それが・・・エルヴィン団長から書類の訂正の仕方を私がお伝えするようにと言い使われまして。今はどうしてもダメですか?」
は今やリヴァイ班の文官のような役割も持たされている。デスクワークが苦手なリヴァイにエルヴィンが付けたのだ。
「今から出かける所だ」
「そうでしたか・・・何時頃お戻りですか?」
は困った様な顔でリヴァイを見つめる。職務に忠実でソツのないだ、何時頃と釘を刺してくる。
だが、今やを見てリヴァイの心拍数が更に跳ね上がる。このままでは書類はおろかに何もしないという保証は出来ない。
仕方ないと言う顔でリヴァイは告げる。
「2時間後には戻るが就寝時間だ、お前はそれに付き合えるのか?この量だと徹夜だぞ。」
「仕事ですから・・・。お待ちしてます」
「チッ、仕方ねぇな。お前職務に忠実なのもいいが体が壊すんじゃねーぞ」
そう言ってリヴァイは足早に部屋を出るとを振り返らず外出した。