第12章 空いた心の穴
空いた心の穴
は大人になった。
リヴァイはどこか心に大きな穴が空いた気がした。脳裏に去来するのはまだ訓練兵団にいるときのの記憶。どこまでもせっせとリヴァイを追って小さなが歩いて来る。
最初の頃、を見つけたのはほんの気まぐれだった。デスクワークに煮詰まっていたリヴァイはランニングに出ていた。そこに必死になって立体機動のバランス訓練をしているを見つけたのが最初だった。背も小さく珍しい東洋系の黒い瞳は真剣に訓練に励んでいた。その必死な顔にリヴァイは絆されたのだ。
気がつけばの装具を取り上げて自分がバランス訓練装置に乗っていた。そして、普段の自分にはあろう事か訓練に付き合っていた。
気がつけば訓練でを抱きしめる度に、少しずつだが成長をして行くを感じていた。彼はそれで十分に満たされていた。
だが、ある日。だいぶ窮屈になってきたの兵服姿を見て、はたと気づいた。はいつまでも子どもではないということに。
いつかやってくる別れの時。
壁内に帰還後、リヴァイはエルヴィンに報告するとエルヴィンはの成長を喜んだ。だが、リヴァイにはその喜ぶ理由が分からない。
「リヴァイ、の体は子供を宿すことが出来るようになったと言うことだ。」
「あ?そうなのか。ってことは今までは文字通りガキだったってことか」
「私も詳しいプロセスは知らないが、どうしても知りたいというのであれば医療班のドクターに聞いてみるといい。」
エルヴィンは地下街出身であると言うだけで教育を受けられなかったリヴァイに一抹の寂しさを感じた。
『が子を宿せる大人の女になった。』
しばらく感じていなかった衝動にリヴァイは戸惑った。
そして、やってきた壁外調査の初日には大人になったことをペトラから告げられた時、彼は別れを切った。最初で最後のに対する警告。
「俺も女を知らねぇ訳じゃねぇ」
と。