第1章 気まぐれ
「おい、お前。そこのレバーハンドルを回して俺を上に上げてみろ。」
「はっ!」
女子は戸惑ったようにレバーハンドルを回し男を上に上げる。すると、男は何ともないという風にバランスを取ることが出来た。
「お前、こんな事も出来ないのか。」
「申し訳ございません。」
男は地面に降り立つと女子に装備を戻した。
「お前の名前は?」
「・と言います。」
「ほぅ、珍しいな東洋系か。」
男はしばらく思索するような様子を見せたかと思うと
「もう一度やってみろ。見てやる。」
「えっ?あのっ…。」
「グズグズするな、装備を付けろ。それとも教官じゃなく俺じゃ不満か?」
「いいえっ、滅相もないです。」
突然現れた粗野な物言いをする男には身震いを覚えたが言われるとおりに装備を装着した、そして体を大きく揺らして柱にとりつき自らレバーハンドルを回そうとしたが。
「お前、一人でこれを回していたのか?」
「はい。」
「器用な奴だな、それでもってバランスが取れないとはな。まぁ今はいい、俺が回してやる」
そう、男はいうとレバーハンドルを上げるが
「うっ!」
はやはりバランスが取れない。頭が下に下がってしまう。
「起き上がってみろ。」
「はいっ!」
とは言うものの、どう頑張ってもは宙吊り体制から元に戻れない。
「チッ、本当に訓練兵団でやっていくつもりか?お前。」
はもがもがとも足掻いたが一向に宙吊りのままだ。男は眉間の皺を深め見かねてこう言った。
「振り子の原理で利き足を思いっきり下に下げろ!」
「はいっ!…くっ…」
するとどうだろう、は起き上がることができた。が…
「うわっ!!」
それから先、バランスが取れずに再び頭を下に宙吊りとなった。
「お前、フザけてるのか?」
「ふざけてませんっ!」
男から見れば女子はふざけているようにも見えたが、顔は真剣そのものだ。
「チッ、仕方ねーな。」
そう言うと男はを一度自らの手で起こした。
「いいか、これが基本の体制だ。まずこの状態から慣れろ。最初は補助してやる。」