【Harry Potter】 Missing Heart
第14章 彷徨う心
はスネイプとリリーエヴァンズとの関係は露も知らない。の無邪気な笑顔とは対照的にスネイプの心は痛む。だがスネイプはまるで世間話をするかのように表情を変えずに話を続ける。
「当時はグリフィンドール寮の所属で利発で優秀な学生だった。特に変身術が得意だった。意地っ張りで優しい子だった」
「先生とは良いお友達だったんですね。」
の言葉にスネイプはどきりとした。
「どうしてそう思ったかね?」
(我ながら奇妙な問いだ)
と思ったが世間話は続く。
「スネイプ先生の表情を見れば分かります。優しいお顔をされていますから。」
「・・・そうかね。」
「ええ。」
そしてスネイプは少し考え込むと同時に再びドキリとする。
そして思わず口をついて出てしまった。
「強いて言えば君は彼女と性格が似ている。」
「じゃあ、もしかすると少しいたずらっ子かも知れなかったですね。
私の小さいときはそうでしたから。」
「そうだな。」
やがて、はスネイプの部屋の時計を見た。
「ごめんなさい、もう日付を回ってしまいましたね。そろそろ私も失礼します。
遅くまですみません。」
「あ、ああ。もうそんな時間かね?」
「それでは、失礼しますね。おやすみなさい。」
が出て行った後にスネイプは深いため息をついた。
(気づかなくていいところに気づいてしまった。)
今までスネイプは多くの時間を共にと過ごしてきたが、を魔法界に順応させようと必死になって気づかなかったこと。
(彼女はリリーと・・・似ている。)
しばらくの年月忘れていた激情が蘇る。子どもの頃に抱いていたリリーへの強い思い。
そして彼女の死に際した時の深い悲しみ。
(バカな、彼女はリリーエヴァンズではない。一緒にしてはならない。混同してはならない。たまたま使っている杖が同じだけだ。)
情緒不安定になる自分と冷静に自身を見つめる自分がいる。
空虚だった所に再び血が巡りだした様な感じがしていた。
だが沸いた脳は次々とあらぬ方向に思考を生み出していく。もはや今の彼自身の精神力では抑制が利かなかった。