第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
さとの父親は、初めから大きな野望を持っていたのだ。
娘が生まれたら、将軍に嫁がせようと…
側室……出来るなら正室として、自分の娘を…
大野屋は、さとを私の元に嫁がせるつもりで育て、そして見事にその計画は成功を納めた。
「しかし…そのようなことが…」
「私もあり得ないと思ったのですが…」
どこまでが仕組まれていたというのだ?
まさか、あの寺の牡丹の前でさとと出会うたのも、偶然ではないというのか?
さとの顔が脳裏に浮かんだ。
笑った顔…
怒った顔…
拗ねた顔…
私の上で舞う、妖艶な蝶のような姿も……
「…違う…その様なことは、あり得ない」
「上様、如何いたしますか?」
雅紀が申し訳なさそうに言った。
…………本当なら。
それが事実ならば、将軍家を欺いた罪で、大野屋はもちろん、さととて、ただでは済まないだろう……
………………
…………
いや。
私はさとに、今まで一度も実家のことを、特別に取り計らって欲しいなどと…
そのようなことは言われたことはない。
私が勝手に…
家臣たちも、御台所であるさとを気遣い、大野屋との商いを増やしていった。
だから………
雅紀の持ってきた話は、取るに足らないつまらぬ事で……
「御台様に、直接お聞きになられますか?」
「さとに?」
「上様が御台様はそのようなことをなさらないと…それは単なる噂だったとだと…
そうおっしゃるなら、私も忘れますゆえ…」
「雅紀……」
雅紀の辛い立場も分かる。
確信をもっているからこそ、私に伝えたのだろう。
「…あい分かった。さとと話してみる…」
「……御意」
翌日、さとを連れて菖蒲を見に出かけた。