第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
姫は絢と名付けた。
「絢姫様~、そんなに走られては転びます!」
「だって、早くお菓子を母上に届けたいんですもの!」
「ですが、もっとゆっくり…」
「大丈夫よ!転んだりしないから」
遠くから姫と乳母の声が近付いてきた。
「母上様、金平糖。食べましょう!」
「絢姫、お父上様もおいでですよ」
「あ、父上!父上も金平糖、食べるでしょ?」
「では、馳走になるかな…」
「絢姫…」
絢姫は今年で5つになる。
早いもので、姫を初めてこの腕に抱いた日から5年が過ぎる。
絢姫は、快活で物怖じしない明るい娘に育っている。
さとが、出来るだけ近くに置いて大切に育てているせいだろう。
「ほら、母上…いろんな色があります。どれがいいですか?」
「そうねえ~…では、赤いのを…」
「はい!空色も差し上げますよ」
「絢姫は、何色がお好きなの?」
「私は…黄色と、白と~、赤も好きです」
「それは全部というのです…」
「うふふ…じゃ、全部好きです!」
こんは微笑ましいやり取りを見るのは、心が和むものだ。
さとは、絢姫の生みの親の千代も一緒に3人で過ごすことも多かった。
『絢姫のお腹様は千代の方様なので…』
そういって、千代のことも立ててくれた。
そして、千代にもう直ぐ2番目の子が産まれるのだ。
いつ産気づいても可笑しくない状態で、毎日御匙に診てもらっているのだ。
「父上、もう直ぐ私姉様になるのよね?」
「おお、そうだ。こんなおてんばな姉君では、生まれてきた子に嫌だと言われるのではないかな?」
「そんな~…絢はいい子になりますから!そうしたら、嫌だって言われない?」
「絢…大丈夫ですよ。あなたはとても優しい子だから…きっといい姉君になりまする…」
「母上!」
さとに絢が抱きついた。