第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
絢の後、千代に子が出来ぬので、周りの者は側室をあと一人、二人迎えるように言ってきていた。
しかし、私はそれを拒み続けた。
おなごは千代だけでよいのだ…
さととの寝屋に通うことの方が多いので、それでなかなか二番目が出来ぬのだろう。
それは何となく分かっていた。
千代が嫌なのではない…
さとがいいのだ…
子がなかなか出来ぬので、さとも自分の方はいいから、千代の方に行ってくれと言うのだが…
「さとが悲しそうな顔をするからな」
寝屋で、事が済んだ後にそう言うと、さとは、
「私は悲しそうな顔などしてはおりませぬ」
と頬を膨らませた。
そんな顔がまた可愛くて…
「では、さとは私が千代の方にばかり通ってしまい、さとの方に全く顔を出さなくなってしまってもよいのか?」
「それは…千代様のご懐妊のためには…私は…」
「全く来なくてもよいのか?」
「上様……」
さとが困ったように眉を下げるのを見て、思わず笑ってしまうと、さとはますます膨れた。
それでも将軍家のいやさかのために、嫡男の誕生は必須。それは私も千代も良く分かっていた。
なので、週に一度は千代の元に行くようにはしていた。
それでもなかなか子は出来ず、重圧に耐えかねた千代にも、『他にもご側室をお迎えにはならぬのですか?』
などと言われ始めていた…
そんなとき、千代が懐妊したのだ。
次こそは男子を……
大奥は色めき立った。
はっきりとは言わぬとも、雅紀も次は嫡男を、と思っているようだった。