第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
さとと部屋に入ると、そこにいた者たちが皆急いで平伏した。
「上様、姫君の御誕生、誠におめでとうごさいます」
見守っていた御年寄が恭しく言った。
「大義であったな…」
部屋の中央には布団に横になる千代と、その横には……
急いで起き上がろうとする千代にさとが駆け寄る。
「どうか、そのままで。お千代の方様、よう為さりましたな…お加減は如何ですか?」
「御台様、ありがとうございます。お子を…抱いてやってくださいまし…」
「……よいのですか?」
「御台様のお子です…」
千代の言葉に小姓がすやすやと眠る赤子を抱き上げ、さとに抱かせた。
千代が懐妊してから、さとはいつも千代のことを気遣っていた。
実家の廻船問屋を使って、珍しい菓子や果物を取り寄せては見舞いに贈ったりしていたのだ。
恐らく、子が産まれるのを心から楽しみにしていたうちの一人だろう。
「……上様…」
「…うむ…」
「なんとお可愛いらしいことでしょう…あ、御覧くださいまし。こんな小さな手で…」
さとが指を近づけると、赤子はきゅっとそれを握った。
「……姫さま……」
さとは、はらはらと涙を溢した。
そんなさとが堪らなく愛しくて、その肩を抱き締めると、
「上様。私ではなく姫君を…」
「えっ、あぁ…」
さとはなんの躊躇いもなく、赤子を私の方にゆっくりと渡してきた。
戸惑いながらも、そっと小さき塊を抱きとった。
………なんと小さく、なんと軽いのだ。
産まれたばかりの子を抱いたのは、初めてのことで…
そのふわふわとした不思議な抱き心地に、胸の辺りがじんわりと温かくなった。
…………悪かったな…
姫だったことを、落胆して……
心の中で、わ子にそう詫びた。