第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
「かなりの激しさだったようですね」
「ん?」
「ん?ではございませぬ。お分かりでしょうに…」
大奥の仏間から戻り、硯に向かったところで、やって来た雅紀がそう言った。
昨晩のこと、もう聞き及んだのだろう。
「昨晩の御寝屋のことです」
「おお、そのことか」
「御中臈たちが我先にと報告してくれました…」
「それで?なにかおかしな事でもあったのか?」
わざと素知らぬ振りで書物を捲った。
「御台所さまは、なかなかの御床上手だったと…御中臈たちが顔を赤くしておりました」
「そうか」
「まあ、という訳で、御台様の疑いは晴れた訳ですが…
二人とも、先を争って御台様の様子や、上様の激しいなさりようを私に事細かに……
聞いていて、我が事のように身体が熱くなりました」
「それは、すまなかったな、雅紀…」
私とさとの寝屋とのことなど、雅紀はどのような顔で聞いていたのだろうか?
そう思うと笑いが込み上げてきた。
「良うございましたな、上様」
「ん?」
「御台様が、その…よもや男だとは…」
「雅紀」
「は、はい」
筆を置いて身体を雅紀の方に向けた。
「側室を迎える」
「ええっ!?」
「元気な子を産んでくれる、丈夫そうなおなごを、何人か見繕え」
「何人か、とは…また、急な…」
今まで何度も『側室を』と言われても、いい返事をしなかったから、雅紀が驚くのも無理はない。
「ただ、ひとつだけ…」
そう。
ひとつだけ、先に言っておかねばならぬ事が…
「生まれてきた子は、皆、御台の子として育てる」
「…上様……」
それだけは…
どうしても譲れない条件として、側室となるおなごに飲んで欲しいのだ。