第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
さとを御台所に迎え入れたことで、私の生活は華やかに色づいた。
さとと見る全てのものが、今までと違い、輝いて見えた。
見慣れたはずの中庭の菖蒲さえも、いつもよりも可憐に感じるのだから、不思議な程だった。
大奥では、さとは決して前に出過ぎず、御台所という地位をひけらかすようなこともなかった。
何か行事があるとき以外は、自分の部屋で、僅かな御小姓たちと静かな暮らしを楽しんでいた。
慎ましやかで、物静かなさとは、寝屋のときだけは激しく乱れる姿を見せてくれるようになった。
艶やかな声で鳴き、伸びやかな肢体を惜しげもなく仰け反らせて喘いだ。
私はさとに夢中だった。
さとが居れば、もうなにも要らないと…そう思えた。
雅紀に『約束の側室を…』と言われながらも、のらりくらりと交わし、さとを迎えて一年が過ぎた。
そんなある日。
「上様、上様は御台様との御寝屋の際に必ず人払いをなさいますが、それを御年寄などが騒ぎ始めておりまする…」
「…そうか」
「そうか、では、ございませぬ。脚繁く大奥に通われては御台様と寝屋を共にしておられますのに御子が出来ぬのは、御台様が本当は上様を受け入れてはいないのではないかと…
そう疑い始めておるのです」
さとが、お添い寝役がいない方が乱れてくれるから、いつも人払いをしていたのは私だ。
「…上様、如何いたしましょうか?」
「あい分かった。次の寝屋には添い寝役を二人つける」
「……よろしいのですか?」
「さとに話しておく」
「はい…では、そのように手配いたします」
やむを得ないだろう。
翌朝の総触れの後にそのことを告げると、さとは、
「…承知いたしました」
と、そう答えた。