第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
これまで、和也と何度も城下に下っては、私の…というよりは和也の目に留まったおなごと寝屋を共にしてきた。
その時間は、まあ、男子としてそれなりに楽しく過ごした。
だか、また会いたい…
側にいて欲しい…
そう思えるような相手には出会えなかった。
私さえその気になれば、直ぐにでも正室として迎えられるような娘もいた。
しかし、こればかりは……
私には、誰かを心から愛するという感情が欠落しているのかと、疑い始めていたところだ。
雅紀は、然るべき譜代大名辺りの姫を御台所として迎えれば、そのうちに情が涌くものだ…
などと、私に言い寄っていた。
……それも、そうかも知れぬ…
そう思いながら過ごしていた。
そんなとき、さとに会うた。
その身なりから、当然おなごだと思っていたが、それが違ったと分かった瞬間も、不思議なのだが、それほど衝撃は受けなかった。
……なぜなのだろうか。
考えてみても自分でも分かりかねる。
なぜさとだったのか…
さとでなければならなかったのか…
……………
人は、持って生まれた定めのようなものがあるのだという。
私はこの、将軍家の嫡男として生まれ、のし掛かる責務と重圧感を当然のことと受け止め、ここまで生きてきた。
それが、廻船問屋に生まれ、男でありながら女として育てられたさとと出会った。
交わるはずのない定めのふたりが、もうすぐ夫婦となる。
「なあ、和…」
「はい」
「縁というのは、なんとも不思議なものよのぉ…」
渡り廊下から空を見上げ、そう呟く私に、
「良いご縁でなにより。上様のお幸せそうな顔に、和也も感無量にございます」
和也はそう言った。