第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
「さとのことを、しかと支えてやってくれ」
「はい、私の命に代えましても…」
「頼むぞ」
侑李は、さとの実家の廻船問屋から公家の養女になる際も連れてきている侍女だ。
男である侑李が、この大奥に入ることは雅紀が口うるさく言う『前例がない』こと。
さとが輿入れするにあたり、大奥の中に別棟を用意し、そこに侑李を中心に、ほんの数人の侍女と住まうことにした。
立場上は御台所ではあるが、さとは男の身…
この女ばかりの大奥にさとや侑李のような男が、女の形をして暮らすなど、知れれば大変なこととなろう…
「私は、翔さまのお近くにいられれば、それでいいのでございます…他に望など、何も…」
そう言うさとの言葉に、『そうか』と…
それだけでは、私の気が済まない。
御台所として、肩身の狭いようなことだけはしたくなかった。
そのためなら私は、どんな事でもできる気がしている。
さとのために着物も、部屋に広げても二間では足りぬくらいに用意した。
それほど、身体は男であるさとに、心奪われてしまっているのだ。
「さと、よく顔を見せておくれ。着物もよう似合うではないか」
「ありがとうございます…上様が私のために選んでくださったと聞きました」
「うむ、たくさんあって迷うてしまったわ」
「でも……」
「ん?でもなんだ?」
「あ、いえ…」
「申してみろ!気に入らなかったものは別のものにでも…」
「そうではありません…」
「では、なんだ?」
「数が多すぎます…あのようにたくさん、着るのに迷いますもの…」
「何を申す!少ない位だろう…」
「…上様…」
「さと…」
さとが、顔を上げて真っ直ぐに私を見つめた。