第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
この期に及んで、心臓が高鳴る。
城の中にさとがいる…
顔を見るまでは、信じがたいほどの悦びだった。
部屋を二つ過ぎたその奥の間、
深く頭を下げた娘の姿が……
「さと…」
「この度は、このようなところへ上様御自らお越しいただ…」
「さと!」
「……」
「顔を…顔を見せてくれ…」
さとがゆっくりと頭を上げる。
「…上様…」
「さと!」
さとの雅やかな美しい姿に、我を忘れて跪き、その華奢な肩を抱き寄せた。
「…上様…」
「翔と呼べ」
「…でも…」
「いいのだ」
「ですが…」
「さと!!」
「んんん///」
控えていた和也の咳払いで我に返った。
気が付けば、私たちの他に、和也と先程の娘が控えていた。
忘れていた…
まあ、別に婚礼さえ終われば、晴れて夫婦となるのだから…
誰かに遠慮するようなこともないのだが…
それでも、さととのこんなやり取りを見られるのは恥ずかしい。
気まずそうに和也から目を反らす私に、さとが、
「侑李を連れてくることをお許しいただき、ありがとうございました…」
私に両手を握られたまま、僅かに頬を染めてそう言った。
「…そなたが侑李か」
部屋の隅に控える娘に声をかけた。
「はい、侑李にございます」
侑李は畳に額が付くほどに頭を下げた。
「侑李…苦しゅうない、面をあげよ」
ゆっくりと顔を上げた侑李…
……さとには劣るが、美しい…
「侑李、そなたは…」
「はい、わたくしも男にございます」
「…そうか」
「さと様について大奥に上がることをお許しいただいた上様の、寛大なご裁量に背く事なきよう、私が男であることは、決して誰にも知られないようにいたします…」
侑李は、凛とした涼やかな目でそう言い切った。