第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
婚礼の前に、どうしてもさとの顔が見たいという私に、雅紀が折れてくれたのはさとが大奥に入ってから七日後だった。
「上様が、婚礼前に御台様にお会いになるなんてことは、聞いたことがございませぬ!」
「では、今がその初めてだ」
「……」
さとに会うのはひと月振りになる。
嬉しくて、雅紀の小言など耳に入らなかった。
名目上は挨拶とご機嫌伺いということで、さとが待っている部屋へと馳せ参じた。
それにも雅紀は、
「上様の方から出向くなどあり得ません!御台様が中奥まで出向き、挨拶するのが当然の事」
と鼻息を荒くした。
そんな仰々しい場所では、さとを抱き寄せることも出来ぬではないか!
全く雅紀は気が利かぬ!
そんな私と雅紀のやり取りを、和也はいつも笑って見ていた。
和もまた、さとの輿入れを喜んでくれているうちの一人だ。
そして、さとの素性を知る数少ない理解者で協力者。
大股で歩く私の後を、和は小走りについてきた。
「翔さま、もう少しゆっくりと…」
「和、私がどれほどこの日を待ちわびておったか、和ならばわかるだろう」
「はあ…しかし…」
「あ、いや。分かるまいな、たとえお前でも…」
「翔さま!…さと様は逃げませんから…」
「分かっておる!」
和と言い合いながらさとの部屋の前に着いたときは、二人とも息を切らしていた。
「…さと…」
………
暫くすると、中から障子が静かに開き、可愛らしきおなごが、両手をついて深々と頭を下げた。
「お待ち申し上げておりました」
「うむ」
「どうぞ、お入りくださいまし…」
娘に招かれ、私と和は部屋の中へと脚を進めた。