第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
「上様、もう少し落ち着いてください」
「落ち着いておるわ!」
「…左様でごさいますか…」
雅紀が笑いを噛み殺しているのがちらりと見えたが、何か言う余裕などなかった。
そう。
今日は待ちに待った、さとの輿入れの日。
やっと、この日が来たのだ。
さとを御台所として迎え入れたいと雅紀に言ったときは、反対されるだろうと思ったが、
「私が申すべきことは二つにございます」
和也から、私が何度も会いに行く『さと』の素性を聞いていたのだろう。
私がこれほどまでに入れあげた相手は、後にも先にもさとのみ…
雅紀は言わずとも分かっていたのだろう。
雅紀に示された二つのこととは。
ひとつはさとを然るべき公家の養女としてから輿入れさせること。
もうひとつは、さとを御台所に迎えた後、側室を迎え、子を成すこと。
どちらも、反論の余地のない、当然のことに思えた。
ならば、雅紀の申し出を飲むしかないだろう。
側室を………
輿入れ前のさとに、どうしても話すことができなかった。
さとは、どう思うだろうか…
私が、他にも…
「翔様、さと様の御一行が城内に入られました。」
和が少し慌てた様子で伝えてくれた。
「おお、そうか。和、私の代わりに迎えてくれ」
「…御意」
内心は自ら迎え入れたい。
『よく来た。待ちわびた』
と抱き締めてやりたいところだが、そういうわけにも行かぬ。
ますます落ち着かない気持ちをもて余し、室内をうろうろと歩き回る私を、雅紀はまた笑っていた。
……さとが、私の側に来てくれた。
早く会いたい…
さと……