第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
「はい、お待たせしました」
「…かたじけない」
「……髪に…」
「えっ?」
ふと見ると、団子を出してくれた茶屋の娘の髪に、黄色い粉が付いているのに気がついた。
手を伸ばし払ってやると、私の手にもその黄色が移った。
「……牡丹の…」
「牡丹?」
「はい…さっき庭のを採ったときに、ついたんだと思います…牡丹の花粉…」
花粉か…あんなに色濃い黄色なんだな…
茶屋の娘が行ってしまうと、待ってましたとばかりに和也が小声で言ってきた。
「気に入りましたか?」
「…え?」
「今の娘。」
「ああ……」
和也の言葉に、娘の後ろ姿を目で追った。
「……いや…」
「翔様がご所望ならば、段取りますが…」
「…そうだな……あ、いや。取り敢えず牡丹を見に行って…それから考える…」
「分かりました。今日はずいぶんと慎重ですね」
「…そうか?…」
茶屋で団子を食べた私たちは、出てくる前からの予定通り、大師様の牡丹を目指した。
城下に出てくるもうひとつの理由…
それは、気に入った娘を呼び寄せて、一夜限り寝屋を共にする。
もしその娘にわ子が出きれば、然るべき筋を使って輿入れさせればいい。
しかしその前に、そろそろ正室を迎えなくてはならない。
分かってはいるのだが…
幸か不幸か、今まで関係した娘に子が出来ることはなかった。
もしかして、子種のない身体なのか…?と、そろそろ懸念を抱き始めていた。
「着きました。」
辺りに気を配り、怪しい者のいないことを確かめた和也が、私を門の中へと誘う。
「おおお、なんと見事な!」
門を入り、牡丹咲き誇る庭の方へと脚を進めようとしたそのとき。
何の気なしに左を向き、塀の先へと目を凝らした。