第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
「くれぐれもお気をつけて」
「分かっておる!」
心配顔の側用人『雅紀』の肩を軽く叩いた。
町人の装いに身を包んだ私は、城下に通じる小さな門を潜った。
「今は、お大師さまの牡丹が見頃だそうですよ」
「ほお…、牡丹か…楽しみだな」
小姓の和也の言葉に、心はもう城下の寺に重なりあって咲き狂う、牡丹の花へと飛んでいた。
「このところ、お忙しく、お忍びで城下に出るのもままなりませんでした故…」
「んふふふ、堅苦しくなくていいよ、和」
「……」
「そんな話し方じゃ、変に思われるだろ?」
「…はぁ、まあ…」
私と和也は幼馴染で、年端も行かぬ頃から、剣の相手は和也だった。
和也と共に大きくなったといっても過言ではない。
同じ年くらいの男たちの中で、和也はずば抜けて剣の腕が立った。
私を含め、和也に敵う者はなかった。
それ故に、私が忍で城下を視察に行く際にひとりだけ、という事で和也が選ばれた。
本当は何人も護衛を着けたかった雅紀に、目立っては意味がないと、なんとか説き伏せ、和也だけにしてもらったのだ。
城下に出ていき、庶民の目線で、庶民の暮らしをこの目で見、
庶民の声をこの耳で聴くことが、この国を治める上で重要なとこ、と。
そう信じていた。
城の中にだけに居たのでは、民の願う本当のところは見えないはず。
だから、こうして町民の成りをして城下に出てくるのだ。
それと、もうひとつ……
城下に出る楽しみのひとつが…