第20章 願い叶うなら【O×M】
「じゃあ、翔くん…行ってくる」
玄関でくるりと振り返って、潤は俺を見つめた。
今にも涙が零れそうな、キラキラした瞳が俺をじっと見つめている。
スーツのポケットには『enjoy』の赤い文字…
そのセンスは、どうかと思うけど…
「カッコいいよ、潤…それならニノに負けてない♪頑張って!」」
「……翔くん!!」
潤が俺の首にしがみ付いた。
「翔くん、今までありがとう。楽しかったよ…」
「俺もありがと。これからも、側にいるから…」
「うん…」
俺達のやり取りを、隣でじっと智くんが見ていた。
明治神宮まで送っていくため。
そしてその後は、潤は智くんと家に帰る。
「後は、頼むね」
そういう俺に、智くんはゆっくりと頷いた。
占いなんかにここまで傾倒して、と軽蔑されるかもしれない。
それでも、俺達は『山の頂を極める』そう信じて、今までやって来たんだ。
俺は潤を愛していたのか?
それは分からない…
でも……
こうして、智くんと出て行く潤を見送った俺は、胸の奥の小鳥がザワザワ騒ぐのを、必死に抑えていた。