第19章 さよならのソナタ【A×O】
俺は一人で、あの場所にやって来た。
高い場所にある小窓から、夕暮れのオレンジ色の陽が、優しく差し込んでいた。
「……智…」
そっと、その名前を呼んでみた。
納屋の中は、不思議なほどにあの時と変わらない……
まるで、時が戻ったようで。
「…さと……」
今度はもう少し大きな声で呼んでみた。
ずっと口にすることもできなかった、その名前。
何だか、息が詰まったような感じで、胸を押さえた。
その時。
「まー……」
……………
「まー」
はっきりと俺の耳に届いた、懐かしい声。
忘れたことなんかない。
ゆっくり振り向くと、そこに智が立っていた。
「まー、来ると思ってたよ…」
「…さと…し…」
喉が張り付いて、声が上手く出ない。
幻じゃない。
確かにそこに、はっきりといる。
「会えて、よかった」
「智…どうして、ここに?」
「だって、ここは、まーとの思い出の場所だよ~?」
「覚えてたんだ…」
「それに、まー、ポケットの中…」
ポケットの中には、
あの日智がくれた青い石が……