第19章 さよならのソナタ【A×O】
「まーがそれを持ってきてくれてから、また会えたんだ…
まー、来て…」
智の伸ばした手に吸い寄せられるように、その躰を抱き留めた。
「智…智…」
「まー、ずっとこうしたかった」
俺は、久しぶりにこの胸に智を閉じ込め、夢中でその躰を貪るように抱いた。
「…智、智…智……」
「…まー…好き…気持ちイイ…もっと愛して…」
智は、あの頃と全然変わらなくて、
温かくて、優しく俺を包んでくれて、
俺達は、一緒に登りつめた。
行為の後の、気怠い心地よさの中、智が俺に言った。
「傷付けたまま、逝ってしまって。
これでやっと言えるよ…」
「智」
「本とはまーが好きだった、素直になればよかった。でも…ずっと愛してくれて、ありがとね」
「さと…」
「まーと兄弟で良かった。まーと会えてよかった」
白い光が俺達を包む…
「まー、幸せに…さよなら…」
「智!!」
納屋の中に、夜の帳が下り、
俺の手のひらの青い石は無くなっていた。
智が死んで、
俺は初めて、泣いた。
【END】