第19章 さよならのソナタ【A×O】
午後の優しい日差しの中。
ベッドに俯せて目を閉じている智は、この世のものとは思えないほどに、美しくて…
俺が付けた赤い花びらが、
背中にいくつも散らばっていた。
「智…もう、服着ないと、母さんが帰って来るよ」
「うん…まー、もう一回ぎゅってして」
躰を半分起こして、
突き出された両手を引き寄せ、
俺はその華奢な躰を腕の中に閉じ込めた。
俺が中学2年の時、初めて智を抱いた。
雷が怖いって、智が俺の布団に逃げ込んできた時だ。
それからずっと、親の目を盗んで智を抱いた。
こんな関係が、世間的に認められるものじゃないって知ってるけど。
いつかは止めなきゃいけないってことも…
でも、彼の躰は麻薬のように、俺を捉えて離さないんだ。
これで終わりにしようって。
毎回そう思ってるのに…
「まー…俺昨日、同じクラスの翔くんに告白された」
「えっ?」
「どうしたらいい?」
どうしたら、って…
智はじっと俺の顔を見つめている。
試すような、諮る様な、
キラキラしたその目は、何にも穢されないみたいで。