第19章 さよならのソナタ【A×O】
「まー、早くこっちにおいで」
「待って~、さと」
「ほら、これ。まーにあげるよ」
「ホントに?わあ~、綺麗!嬉しい…
ありがと、さと❤」
僕はさとのほっぺにチュウをした。
さとは少し驚いたような顔をして僕を見た。
「お礼だよ」
「じゃ、お礼のお礼ね」
さとは僕の口にチュッと自分の口をくっつけた。
「さと…?」
「パパとママには内緒だよ♪」
「…うん。内緒」
智が10歳、俺が8歳の時のことだ。
田舎のおじいちゃん家に行ったときに、近くの納屋に潜り込んで、智が俺に綺麗な青い石をくれた時の思い出。
もうずっと昔のことで、智は忘れてしまっているだろうけど、俺には大切な思い出だったんだ。
俺達は兄弟で、生まれた時から智とは一緒。
自他ともに認める、微笑ましい仲良し兄弟だった。
そう。
表向きはね。