第18章 お気に召すまま【S×A】
初めて雅紀様に会ったのは、俺が8歳、雅紀様は7歳の時。
祖父が相葉家の執事だったので、そのまま俺も見習いに入った。
といっても、当時は雅紀様の遊び相手。
彼がこんなに遠い存在と知らない俺は、友達として対等に付き合っていた。
彼の髪を拭きながら、ほんの少し思い出に浸っていた。
気が付けば、湯船の雅紀様が口を少し開け、呼吸がいつもと違う。
慌てて抱き上げると、心なしか身体が熱い。
しまった!!
俺としたことが。
風呂に入る前から体調がよくなかったのかも。
タオルで包むと、雅紀様が目を開けて、俺の首にしがみ付いてきた。
「翔…」
「申し訳ございません。私が気付かず…」
慌ててベッドに寝かせ、寝間着を着せた。
「翔、翔も服、濡れちゃったね…」
「あ、急いで着替えて参ります」
すると雅紀様が俺の手を掴んで、
「ここで着替えてよ。ずっと側にいて」
「…そう言う訳には…」
雅紀様が熱っぽい目で俺を見つめる。
「すっ、直ぐに参りますから…」
「翔!」
俺は逃げるように自室に戻った。
彼のあの目に……
どうにかなってしまいそうだ///
大急ぎで着替えを済ませ、医者に連絡すると、
15分程でやって来て雅紀様の部屋に通した。
丁寧に診察した医師は、
「軽い風邪でしょう。薬を出しますから、取りに来させてください。」
「はい。分かりました…ありがとうございました」
「飲み物と、果物。後は軽食をここへ。雅紀様は今日はディナーにはいかれない。」
メイドに指示を出し、ベッドの側に戻る。
これで、ひと安心だ。