第14章 幻想花【A×M】
【雅紀side】
あの人は刑事だって言った
…俺のことを、捕まえに来たんだ
いつかはこの日が来ると思っていたけど……
どうしよう…
終わりにしなきゃ…
終わらせなきゃいけない、こんな生活
でも…
無理だ……
彼を手放すことなんか、
俺にはできない……
……どうしたら、いい?
部屋の中で俺を呼ぶ甘えた声
その部屋は、俺が潤を隠すために作った部屋
薄紫色のオーガンジーの幕が幾重にも重なる向こう、
窓辺の陽だまりに潤にベッドはあった
「潤…起きたの?」
「おはよ、雅紀…」
潤が笑う…天使のような無垢な笑顔で
2年前、俺は古いアパートに住んでいた
バイトから帰ると、部屋の前の階段に、小さく蹲っていたのが潤だった
糸のような雨の中、潤は今にも消えてしまいそうな程、儚げだった
俺は急いで部屋に入れ、風呂に入れて潤を温めた
母親の恋人に虐待されていた潤の身体は、痣だらけで、所々その傷が化膿していて
直視できないほどだった